信託財産とできない財産
2019年10月25日
「実務上、信託財産とできない財産」
についてお伝えさせていただきます。
―・◆本日の目次◆―・―・―・―・―・―・
1.実務上、信託できる財産は?
2.実務上、信託できない財産とは?
3.徐々に信託できる財産の範囲は
拡大してきている
4.賃貸不動産を信託する場合の注意点
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~1.実務上、信託できる財産は?~
信託財産は、受託者固有の財産と分別して
管理しなればならない、とされています。
(信託法34条)
したがって、この分別管理ができないものは、
実務上信託財産とできないこととなります。
まずは、実務上間違いなく信託できる
財産についてみていきましょう。
実務上間違いなく信託できる財産としては
以下のものがあります。
・現金(預金)
・不動産(農地を除く)
・株式(非上場)
・特許権
・商標権
<現金に関する注意点>
現金に関しては信託財産専用の預金口座を
開設することで分別管理が可能です。
したがって、
実務上も信託財産とできることとなります。
なお、信託財産を管理する口座は通常
「委託者○○信託受託者○○信託口口座」
といった名称で開設しますが、
このとき、
以下の2点に注意する必要があります。
・上記の名称での口座開設が不可の
金融機関がある(事前に確認が必要)
・上記名称による口座開設はできるものの、
口座の性質としては屋号付きの通常の口座と
同様であり、信託契約に基づいた取り扱いは
できない。
(契約上の受託者変更の事由が
発生したとしても、その自由に基づく
口座名義人の変更ができない。)
※一部の信託銀行や信用金庫は
信託機能を有した口座の開設に
対応しています。
~2.実務上、信託できない財産とは?~
実務上信託できない財産
・投資信託(一部の証券会社を除く)
・預金債権
・農地
<投資信託が信託できない理由>
現状、「受託者○○信託口口座」という形で
口座開設ができる証券会社は少なく、
分別管理ができないため、
有価証券・投資信託の信託は実務上できません。
ただし、野村證券は証券口座の開設に
対応しています。
<預金債権が信託できない理由>
現金との区別がややこしいのですが、
預金債権は信託することができません。
なぜなら、預金債権は
譲渡禁止債権とされているためです。
そもそも預金債権を信託する必要性は乏しく、
現金を信託すればそれで事足りるのですが、
信託契約書上の表現として「預金」と
記載してしまうと、
預金債権を信託していると読めてしまうので、
注意が必要です。
通常、家族信託を行う場合には信託財産に
現金を含めることが多いですが、
その際は契約書の記載として「預金」ではなく
「金銭」とするように注意しましょう。
<農地を信託できない理由>
農地の所有権を移転するためには、
農地法上の許可を得る必要があります。
しかし、現行の制度下では信託を原因とした
所有権移転について農地法の許可を得ることは
できません。
(宅地転用を前提とした場合は除きます。)
したがって、農地を含む土地について
信託をしたとしても、
農地の部分に関しては信託の効力が
生じないこととなります。
~3.徐々に信託できる財産の範囲は
拡大してきている~
上記で少し触れた投資信託の家族信託に
関してですが、
2017年11月から野村證券にて
家族信託の受託者口座の開設が
可能となりました。
この流れを受けて、
他の証券会社も家族信託への対応を急ぐ
可能性があります。
また、銀行での信託口座の開設については、
屋号型のものであれば、
主要な銀行では、対応をしている状況です。
今後も家族信託に社会インフラが対応していく動きは加速していくと予想されます。
~4.賃貸不動産を信託する場合の注意点~
現在、実際の依頼の中で最も多い
家族信託の活用パターンは不動産の
管理・処分能力の保全です。
収益物件を信託するケースも
非常に多くなっています。
そして、収益物件を信託する場合には、
その不動産だけでなく、
同不動産に係る預かり敷金や権利金なども
同時に受託者に信託しておく必要が
ありますので、注意しましょう。
また、不動産の管理・保全にあたっては
管理会社への支払いや固定資産税の支払いなど、
恒常的に現金の支払いが
必要となってきますので、
その原資もある程度信託しておく必要が
あります。
以上、今回は
「実務上、信託財産とできない財産」
についてお伝えさせていただきました