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使い分け

2019年10月25日

「自益信託と他益信託の上手な使い分け」
というテーマについて、お伝えさせていただきます。

―・◆本日の目次◆―・―・―・―・―・―

1.委託者=受益者の信託が多い理由
2.家族信託を使う場合、贈与税の特例は
使える?
3.委託者以外を受益者とする信託が有効な
事例
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1.委託者=受益者の信託が多い理由

家族信託では、信託財産から生じる
経済的な利益は、すべて、受益者に帰属します。

委託者(財産の所有者)が、受益者となり、
信託財産から経済的利益を受け取るように
設計された信託のことを、一般的に
「自益(じえき)信託」といい、
反対に、委託者とは別の人が受益者となり、
信託財産から経済的利益を受け取る
信託のことを、「他益(たえき)信託」と
いいます。

自益信託か他益信託、どちらにするべきかは、
顧客のニーズや状況によって
ケースバイケースです。

この、どちらにするかの判断をする上で、
特に気を付けていただきたい点が、
贈与税の論点です。

次の相続税法の条文は、契約当初から
他益信託となっている場合の贈与税の課税に
ついて規定しています。

(贈与又は遺贈により取得したものと
みなす信託に関する権利)
相続税法
第九条の二 信託(中略)の効力が
生じた場合において、
適正な対価を負担せずに当該信託の受益者
(中略)となる者があるときは、
当該信託の効力が生じた時において、
当該信託の受益者等となる者は、
当該信託に関する権利を当該信託の
委託者から贈与(中略)により取得したもの
とみなす。

基本的に、他益信託とした場合は、
受益権の設定が財産の贈与とみなされ、
贈与税が課税される旨が読み取れます。

また、受益権は、譲渡(売買、贈与)の
対象となります。

受益権が無償での譲渡(贈与)された場合の
相続税法の規定は、次のとおりです。

—————————————————–
相続税法
第九条の二
2 受益者等の存する信託について、
適正な対価を負担せずに新たに当該信託の
受益者等が存するに至つた場合(中略)には、
当該受益者等が存するに至つた時において、
当該信託の受益者等となる者は、当該信託に
関する権利を当該信託の受益者等であつた者
から贈与(中略)により取得したものとみなす。
—————————————————–

受益権の無償での譲渡は、財産の贈与と
みなされ、新しい受益者に贈与税が
課税されることとなります。

多くの家族信託は、これらの贈与税の課税を
避けるため、自益信託として設計されています。

2.家族信託を使う場合、贈与税の特例や
基礎控除枠は使える?

相続税の節税のために利用できる様々な制度は、
家族信託を利用しながら、活用することが
できます。

たとえば、贈与税の毎年の基礎控除枠の
ルールも家族信託をしながら、
適用を受けることができます。

自益信託した現金を、
毎年110万円ずつ孫に贈与をした場合、
基礎控除が適用され、孫への贈与税は、
非課税です。

ただし、契約当初から、
信託財産を贈与することが
確定しているような信託契約には
注意が必要です。

例えば、次のような内容の条項がある
信託契約です。

「受託者は、信託した金銭を、
10年かけて毎年、110万円ずつ孫に
贈与する。」

このような信託契約を締結してしまうと、
契約当初から、10年間分の確定した贈与が

あると判断されてしまい、契約時に
1100万円(=10年×110万円)に対し、
贈与税の課税が行われるリスクがあります。

信託を使いながら暦年贈与を行う場合は、
受益者を孫(受益者)とする他益信託を
設計し、毎年、110万円ずつ、
追加信託していく方法をとることが
望ましいでしょう。

3.他益信託を利用した、お悩み解決の具体例

相続時精算課税制度は、
相続税の対策をする際に非常に多く
利用される制度です。

この制度と他益信託を組み合わせて、
オーナー企業経営者のお悩みを解決した
事例をご紹介します。

Aさんは、株式会社を経営しており、
その株式100%を有するオーナー兼
代表者です。

株式会社の経営は、うまくいっており、
今後、株価は上昇する見込みです。

このままだと、Aさんが亡くなった際、
上昇した株価に対する相続税が
課税されてしまうため、

Aさんは、相続時精算課税制度を利用して、
自社株式を、息子Bさんに生前贈与することを
考えています。

しかし、Bさんは、まだ若いため、
株式の議決権までも、Bさんに
渡してしまうのは不安です。

なんとか、株の生前贈与を行いつつ、
議決権だけは自分に残しておく方法はないか?
とご相談頂いた事例です。

このご相談は、次のような家族信託を
設計することにより、解決することができます。

★委託者(株主)・・・Aさん
★受託者・・・Aさん
※委託者と受託者が同じ信託も可能です。
(これを、一般に自己信託といいます。
cf自益信託)
★受益者 Bさん
★信託終了時・・・Aさんの死亡時

とする他益信託を設計します。

委託者Aさんから、受益者Bさんに
株式の経済的な利益(配当請求権等)を
移すことにより、家族信託の契約時において、
贈与税の課税がなされます。
(相続税法第9条の2第1項)

※家族信託を利用した場合でも、
相続時精算課税制度は、通常の贈与と
同様に適用されます。

また、信託された株式の議決権は、
受託者が行使することになります。

受託者をAさんとする自己信託として
設計することにより、Aさんがご健在のうちは、
議決権をAさん(受託者)が行使します。

Aさんの死亡時には、信託が終了し、
Bさんが株式を完全に取得することになります。

ただし、信託契約時に株式の経済的な利益は
Bさんに移っているので、Aさん死亡時には、
株式の相続に関して相続税の課税は
行われません。

他益信託を使うと、議決権のみ委託者に
残しながら、生前贈与を行うことが
できるわけです。

この方法は、Bさんが代表者として
会社の経営をしない場合、
すなわち、あたらしい事業承継税制で
対応できないケースでも活用が可能です。

以上、今回は様々な具体例を通して、
家族信託と贈与税について
お伝えさせて頂きました。